#004 銀座図鑑「銀座の紫陽花」


銀座に現れる小さな季節

梅雨に入る少し前、銀座の通りに紫陽花が現れる。

銀座の縦道。ビルの脇。
店の入口の片隅。誰かが意識的に置いた、小さな色。大きく咲くわけでもない。並木道のように続くこともない。ただ、そこにある。

平日の午前中は、気づく人は少ない。
足早に通り過ぎていく人の視線は、上か前を向いている。

土日の朝になると、少し違う。
立ち止まる人が出てくる。スマートフォンを向ける人。何もせず、少し見る人。

紫陽花は、見るための花ではなく、気づくための花のように置かれている。

銀座の花は、主張しない。
季節を知らせる役割に徹している。

桜のように人を集めることもなければ、イベントとして扱われることも少ない。それでも、毎年きちんと現れる。

銀座で紫陽花を見つけると、少し安心する。
今年も変わらず、この街に季節があるということを。

大きく変わり続ける街の中で、変わらずに現れるものがある。紫陽花は、そのひとつだと思う。

それもまた、銀座の一部である。