#003 銀座図鑑「紙袋を持つ人の速度」


銀座の美意識

午前中の銀座を歩いていると、紙袋を持つ人の動きが目に入る。

百貨店の紙袋。
ブランドのショッパー。
無地の、少し厚手の袋。

持ち方はさまざまだが、共通しているのは「速度」だ。

重そうな紙袋を持つ人ほど、歩く速度は一定になる。
急がない。
止まらない。
乱れない。

軽い袋を下げた人は、歩き方が自由だ。
立ち止まり、振り返り、また歩き出す。

平日の午前中は、目的がはっきりしている人が多い。
紙袋は仕事の延長にあり、足取りも迷いがない。

土日の朝になると、様子が変わる。
袋を持つ手に、少し余裕が出る。
速度が、ほんのわずかに緩む。

紙袋は、ただの入れ物ではない。
中身と同時に、その人の時間感覚を運んでいる。

指先で取っ手をつまむ人。
肘にかける人。
両手で大事そうに抱える人。

その持ち方ひとつで、歩き方も姿勢も変わる。

銀座では、紙袋が目立つのではない。
紙袋を持った「人の動き」が目に入る。

私は、紙袋を持って早足になる人をあまり見たことがない。
急いでいても、急いで見せない。
それが、この街の美意識なのだと思う。

今日も誰かが、紙袋を下げて銀座を歩いている。
その速度は、街のリズムと、きちんと合っている。

それもまた、銀座の風景である。

執筆:ginzaboy
Photo:ギンザプロデュース24

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