集合、そして出発へ
この夜は毎年恒例の夜警が行われる。

1回目は18時30分、2回目は20時30分。年末の2日間、だいたい同じ時間に、だいたい同じルートを歩く
法被に袖を通し、拍子木を手に取る。
合図とともに、静かな掛け声が夜に溶けていく。
「火の用心——」
声を張り上げるわけではない。
それでも、よく通る。年末の銀座に、確かなリズムが刻まれる。
歌舞伎座の前を、夜警行列が通る

行列は歌舞伎座の前も通る。
昼間は観光客でにぎわうその場所を、夜警の列がゆっくりと横切っていく。
ライトアップされた歌舞伎座と、町会の法被。
この対比が不思議と馴染むのは、銀座という街が「特別」でありながら「生活の場」でもあるからだ。

ブランドショップの裏手、古くから続く店、オフィスビルの谷間。
歩を進めるほどに、銀座が「暮らしの街」であることを実感する。
休憩時間に、湯気が立つ

ひと通り巡回を終えると、休憩に入る。
そこで振る舞われたのが、温かいおでんだ。

湯気と一緒に、少しだけ会話が弾む。
冷えた指先がゆっくりと戻っていく感覚も、夜警の大事な一部なのかもしれない。
こうした何気ない時間が、この行事を「作業」ではなく「恒例行事」にしている。
銀座の、もうひとつの顔
「火の用心」。
それは防災のための言葉であり、年末を締めくくる大切な合図でもある。

一年を無事に終えられたこと。
また来年も、この街で暮らしていくこと。その確認を、歩きながら声に出して行う。
きらびやかなイメージの裏側で、静かに続いている町会の営み。
見せるためではなく、守るために歩く夜。
年の瀬の銀座には、ネオンとは別の、確かな灯りがあった。

執筆:ginzaboy
Photo:ギンザプロデュース24
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