音の銀座。
銀座四丁目交差点。
信号が変わるたび、街は音で満たされる。
車の走行音。
人の話し声。
自動ドアが開閉する乾いた音。
だが、ほんの一歩。
ビルとビルの間に足を入れた瞬間、それらは急に遠のく。
音が消えた、と思う。
平日の午前中。
仕事に向かう人の足音が、すぐに背後へ溶けていく。
土日の朝はさらに顕著で、街がまだ完全に目を覚ましていない。
路地の中では、聞こえる音が変わる。
靴底が地面に触れる音。
どこかの店の換気扇。
風が建物の隙間を抜ける気配。
銀座の路地は、音を吸い込む。
表通りでは主役だった音が、ここでは脇役になる。
代わりに、空気の密度や光の角度が前に出てくる。
昔から銀座は、表と裏の距離が近い街だ。
通りを一本外れただけで、街の表情が変わる。
それは隠しているというより、使い分けているように見える。
私はこの路地に入るたび、少し歩く速度を落とす。
理由はない。
ただ、そうしたくなる。
再び通りへ戻ると、音が一気に戻ってくる。
さっきまでの静けさが、嘘だったかのように。
けれど、確かにそこにはあった。
音の銀座。
それもまた、この街の顔のひとつである。

執筆:ginzaboy
Photo:ギンザプロデュース24
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